役員退職金はいくらまで払えるの?〜功績倍率による役員退職金の計算方法を解説します

20170217

こんにちは。東京・世田谷区、法人専門の税理士 藤村です。

役員退職金は、経営者が勇退後のセカンドステージを豊かに送るための生活資金となりますが、金額が多額に上ることから計画的に資金を確保しておかなければなりません。

また、税務上の費用(損金)とするためには、気をつけなければならない点がいくつかあります。

今回は、主に税務の観点から役員退職金の基礎知識を解説します。

 

役員退職金はいくら払っても良い。

誤解の多い点ですが、役員退職金の支払額について法令での制限はありません。

役員退職金は、経営者の勇退後の生活資金となるものですから、

  • 社長とその家族が引退後の生活に必要な金額を、
  • 会社の資金繰りが許す範囲

で支給すれば良いのです。

そもそも、会社が自社の資金をどのように使うかは会社の自由です。

手元資金を設備投資に回すか、あるいは引退する経営者の退職金とするかは、会社のオーナー(株主。中小企業では多くのばあい経営者)が自由に決めることができます。

 

不相当に高額な役員退職金は税務上の経費にならない

原則は以上のとおりですが、ここにひとつ考慮しなければならない重要なポイントがあります。

法人税法での取扱いです。

法人税法は、役員退職金のうち「不相当に高額な部分の金額」は経費にならない(損金不算入)と規定しています。

つまり、いくら役員退職金を支給するかは会社の自由ですが、法人税を計算する際には、経費(損金)にできる金額が限定されるということです。

したがって、節税効果まで考えるのであれば、「不相当に高額」とならない範囲で役員退職金を支給する必要があります。

(逆にいえば、会社の節税効果よりも引退後の生活資金を優先するのであれば、必要な額をいくらでも支給してよいということです)

 

不相当に高額ってどれくらい?

では、税務の規定にいう「不相当に高額」とは、どのくらいの金額のことをいうのでしょうか?

じつは、法人税法では「不相当な金額」について、具体的な規定を設けていません。

わずかに、法人税法施行令(70条2項)において、以下の事項を考慮するとしています。

  • その役員が会社の業務に従事した期間
  • 退職の事情
  • その会社と同種・同規模の会社における役員退職金の支給の状況

以上の3点を考慮した上で、役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を損金算入できるとするのみです。

実務上は、上記事項を踏まえて「功績倍率法」という計算方法により、役員退職金の支給額を決定するケースが多いです。

 

功績倍率法の計算方法

功績倍率法では、役員退職金を下記の式で計算します。

役員退職金 = 退職時の報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率

つまり

  1. 退職時の報酬月額
  2. 役員在任期間
  3. 功績倍率

の3つの掛け算によって役員退職金を決める方法です。

 

功績倍率とは?

ここで、はじめの2つ(退職時の報酬月額・役員在任期間)は客観的に決まりますが、問題になるのは最後の「功績倍率」です。

「功績倍率」とは、役員任期中の会社への貢献度合いをある一定の「倍率」で示したものですが、会社への貢献度合いをどのように測るかは、それぞれの会社の置かれた状況によってまちまちです。

同じ役員といっても、創業経営者か雇われ社長かによっても異なるでしょう。

 

一方で、税務の考え方の基本には「課税の公平」があります。

役員退職金について「課税の公平」を実現するためには、

同種・同規模の会社については、同水準の役員退職金を損金算入する

という態度が必要になります。

 

そこで、税務の立場を考慮すると、功績倍率は同業種・同規模の会社における功績倍率を参考に決める必要が出てきます。

 

功績倍率の決め方

ここで厄介なのは、会社が同業他社の功績倍率や役員退職金支給額を調べる方法がないということです。これらの数値を国税当局は公表していません。

また、過去の判例を見ても、各社の功績倍率はまちまちです。

一般的には「社長3倍・専務2倍・取締役1倍」が目安などと言われていますが、これらの数値に何らかの根拠があるわけではありません。

つまり、適正な役員退職金の算定は、(公表されていない)税務署がもつ同業類似会社の退職金データに従うほかなく、100%税務上安全な役員退職金額を算定することは納税者には難しいのが現実です。

 

ではどうすれば良いか?

では、納税者としてはどうすればよいでしょうか?

100%安全な方法はないわけですから、最善を尽くしてあとは腹をくくるしかない、というのが僕の考えです。

公表されているデータを基に、合理的に功績倍率を決定し、その決定方法を税務当局に説明できるように準備しておくということです。

 

公表データとしては、

会計・税務システムのベンダーであるTKCが発行している「Y-BAST

日本実業出版社の統計データである「中小企業の「支給相場&制度」完全データ

などがあります。

これらに掲載されている同業他社の功績倍率を参考に、個別事情を踏まえて「自社の功績倍率」を決定するしか、納税者が取りうる方法はありません。

 

むろん、上記の統計データの平均値を取ったからと言って、税務リスクはゼロにはなりません。

その先は、自分たちがどれだけのリスクを引き受けることが出来るかとの相談です。

税務リスクを限りなくゼロにしたければ、功績倍率を1倍にするという方法もありますし、あるいは追徴課税のリスクに備えて、その分のキャッシュを別途準備しておくという対処も考えられるでしょう。

 

まとめ

最後に、以上の話をまとめます。

  • 役員退職金をいくら払うかは会社の自由である
  • 一方で、税務上は「不相当に高額」な役員退職金は経費にできない
  • したがって、節税効果を考えるのであれば、「不相当に高額」とならない範囲で役員退職金を支給する必要がある
  • 実務上、役員退職金の算定方法としては功績倍率法がある
  • 功績倍率法で役員退職金を計算するには、同業他社の功績倍率を参考にする必要があるが、そのデータは公表されていない
  • 納税者としてとりうる最善の方法は、自社が合理的と考える方法で功績倍率を決定し、課税当局に説明できるよう準備しておくこと

役員退職金は同業他社の支給状況を勘案して決めるべきといいながら、それらの情報が公表されていないという理不尽な状況において、納税者がとりうるのは以上のような方法しかないでしょう。

 

長くなりましたので今回はここまで。

次回は、役員退職金に関わるその他の論点について解説します。


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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区の公認会計士・税理士 藤村千秋です。大手監査法人、M&Aコンサルティング、税理士法人を経て、2016年9月に独立開業しました。中小企業、ベンチャー企業に対する法人税務、資金繰り改善、経理業務効率化、M&A支援を得意としています。職員を雇わず、公認会計士・税理士である藤村が、すべてのお客様をサポートいたします。