役員退職金に関する税務〜損金算入時期、所得税など

20170218

こんにちは。東京・世田谷区、法人専門の税理士 藤村です。

前回は、役員退職金の計算方法である「功績倍率法」の考え方についてお話しました。

今回は、役員退職金を巡るその他の注意事項について解説します。

役員退職金規定の整備

一般に、役員退職金は功績倍率法により計算され、その計算方法は

役員退職金 = 退職時の報酬月額 × 役員在任期間 × 功績倍率

となることをお話しました。

上記の計算方法により役員退職金を支給することは、退職金規定を作成して明確にしておくことが必要です。

退職金規定には、

  • 税務当局に対する疎明資料になる
  • 退職金の算定方法を巡るトラブルを防止できる

という点で重要な意義があります。

中小企業の場合、規定が未整備なケースが多いです。

まだ作られていない場合には、ぜひ作成を検討してください。

※退職金規定のサンプルはネット上にいろいろあるので、それらを参考にしても良いでしょう。

 

役員退職金の損金算入時期

役員退職金は、いつ税務上の費用(損金)となるのかという問題です。

  • 原則:株主総会の決議等によって、退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度
  • 例外:法人が退職金を実際に支給した事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度

原則は、株主総会決議等で退職金の支給額が確定した年度の損金(税務上の経費)になります。

たとえば取締役会等で、それ以前の年度で支給額が内定していたとしても、その年度の損金とすることはできません。

「内定」ではなく「確定」していることが損金算入の要件だからです。

 

例外として、損金経理(費用処理)を条件に、 退職金を支給した事業年度の損金とすることも認められています。

原則処理の場合は、損金経理は求められませんが、例外処理の場合は損金経理が要件となっている点に注意してください。

以下はややテクニカルな内容なので、関心のない方は読み飛ばしていただいて結構です。

例外処理による場合は、上述のとおり支給時に損金経理することが必要です。

ここで注意が必要なのが、役員退職慰労引当金を計上している場合です。

この場合は、支払に係る損金経理の処理引当金の取崩処理をあわせて行う必要があります。

 

(1)役員退職引当金から直接支出する経理

(借方)役員退職引当金 800万円 (貸方)現金預金 800万円
⇒この場合は、損金経理されていないため損金算入できない

 

(2)支給額は損金経理し、役員退職積立金を利益に戻し入れる経理(役員退職金と引当金取崩益の両建経理)

(借方)役員退職金 800万円   (貸方)現金預金 800万円
(借方)役員退職引当金 800万円 (貸方)役員退職引当金取崩益 800万円
⇒この場合は 、損金経理しているので損金算入が可能

 

上記(2)を前提として、上記の仕訳に次の仕訳を追加した場合にも、帳簿記録には損金経理をしたことを認めている。

(借方)役員退職引当金取崩益 800万円  (貸方)役員退職金 800万円
⇒この場合は、決算書等に注記することにより会社の損金経理の意思表示を明確にすれば認められる

 

個人的にはくだらないと思うのですが、「損金経理」という文言を厳格に捉えると上記の結論になります。

例外処理による場合には、(2)の両建て経理が必要になるので注意しましょう。

(参考)国税庁HP:法人税法の損金経理要件について

 

役員退職金の所得税

役員退職金に係る所得税は、通常の役員報酬に係る所得税の計算方法とは異なります。

退職金はこれまでの功労の対価の後払いとしての性質や、退職後の生活資金としての性質があるため、受け取る際には税務面で優遇されています。

役員退職金にかかる所得税の計算

役員退職金にかかる所得税を計算するためには、まず退職所得の金額を計算する必要があります。

退職所得は以下の算式で計算します。

退職所得  =  [ 退職した際に受け取った収入総額 - 退職所得控除額 ] × 1/2

退職所得が出れば、あとは所得税の税率を乗じて、控除額を差し引けば、所得税額が算定できます。

退職所得控除額の計算

上の算式に「退職所得控除額」という言葉が出てきました。

「退職所得控除額」は、退職者の勤続年数をもとに計算され、退職者の勤続年数が20年以下のケースと20年超のケースとでは控除額が大きく変わります。

退職所得控除額の計算

  • 勤続年数20年以下:退職所得控除額=40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続年数20年超:退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数−20年)

特定役員等に対する退職手当の取扱い

役員退職金に関する原則的な所得税の取扱いは以上のとおりですが、いわゆる特定役員については、平成24年度税制改正で重要な取扱いの変更がなされました。

平成24年度税制改正では、役員としての勤続年数が5年以下のものを「特定役員」と定義し、この特定役員が役員退職金の支給を受けた場合には、退職所得を計算する際の最後の「1/2」ができないこととされたのです。

たとえば、勤続年数が5年以下の役員に対する退職金が1200万円だとします。

この場合、改正前の退職所得は500万円ですが、改正後は下記のとおり1,000万円になります。

  • 改正前:退職所得=(1,200万円- 40万円 ×5年)× 1/2=500万円
  • 改正後:退職所得=1,200万円-40万円 ×5年=1,000万円 ←最後に1/2できない

勤続年数が5年以下の場合の役員退職金については、大幅な増税となります。

 

以上で、役員退職金の税務に関する解説を終わります。


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ABOUTこの記事をかいた人

東京都世田谷区の公認会計士・税理士 藤村千秋です。大手監査法人、M&Aコンサルティング、税理士法人を経て、2016年9月に独立開業しました。中小企業、ベンチャー企業に対する法人税務、資金繰り改善、経理業務効率化、M&A支援を得意としています。職員を雇わず、公認会計士・税理士である藤村が、すべてのお客様をサポートいたします。